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黒い傘

それは僕にとってなんの愛着もない、真っ黒い傘でした。

いつかの帰り道、突然雨が降り出して、傘を持っていなかった僕は、駅のすぐ近くのコンビニに駆け込んで、黒い大きめの傘を買いました。

今朝、昨日からの雨がまだ降り続いていて、その黒い傘をさして職場に向かいました。もうすぐ4月になるというのに、冬が戻ってきたかのように寒い朝でした。職場の近くまで来たとき、道を挟んで向かいにある小さなスーパーで、あたたかい缶コーヒーを買おうとふと思いました。

僕はその店でよくコーヒーを買うので、当然置いてある場所は覚えていて、レジで会計を済ませるまでたった1分くらいのことだったと思います。

店を出て傘立てを見たとき、僕の傘はなくなっていました。

それは僕にとってなんの愛着もない、真っ黒い傘でした。

失ったことでしょうか。盗まれたことでしょうか。そこに悪意があったことでしょうか。あるいは悪意すらなかったことでしょうか。

何が僕をこんなにも悲しい気持ちにさせるのかわからず、冷たい雨の中立ち尽くしていました。